「ハンドキャリー貿易」 と 「インド・スリランカFTA」

「スリランカはインドとFTAを結んでいるから産業のポテンシャルが大きい!」

などと言われるのを耳にすることがあります。

「ところでFTAって?」
「どうしてそれで産業が盛んになるの?」
という話題です。

 

インドの輸入関税

スリランカに自動車を輸入するときの税金も高いのですが、実はインドでも負けず劣らず輸入関税が高いのです。

(参考記事) スリランカのプリウス価格は日本の2.5倍!

 

品目にもよりますが、いろんな名目の関税をすべて足すと約30%。さらに州税 (VAT) の15%が乗ると、商品価格は50%近く跳ね上がってしまいます。

したがって輸入品というのはどうしても高価になってしまいます。

ではそういう製品をなんとか安く手に入れたいと考える人が増えると何が起きるか?

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ハンドキャリー貿易とは?

遭遇された方もいらっしゃると思いますが、フリーポートであるシンガポールや香港の空港のインド便チェックインカウンターの周辺には、カートにテレビを載せた人たちを大勢見かけます。

handcarry1(写真と記事は直接関係ありません。)

 

実はこの人たち、インドの家族のためにテレビを買って帰るわけではないのです。

この人たちは、手持ちで商品を運ぶ ”ハンドキャリヤー” と呼ばれます。

テレビ以外にもカメラなどのいろんな製品を運んでいます。

たいていは買った時の箱から製品を取り出して布でぐるぐる巻きにしてスーツケースに詰め込んでいるのです。

箱は別に折りたたんでまとめて運ぶケースもあれば、インド国内で印刷して新しいものを準備するケースもあります。

handcary3

本当はインドに着いたときにすべての輸入関税を払わなければいけません。

しかし、いろんな手を使って税を安く逃れているのが実情です。

 

そしてインド国内で正規品よりも安く売るというビジネスを展開しています。

飛行機代がかかるじゃないかと言われると思いますが、安く回数券を仕入れたり、まとめて多くの商品を運んだりして極限までコストを下げているのです。

 

その結果

ところがそのせいで正規品が売れないのです。。。

本来ならちゃんと保証書のついた正規品を消費者も欲しがるはずですが、あまりの大きな価格差に非正規品を選んでしまうのです。

そのためメーカーの方もインドで売る製品は涙ぐましい努力でコストを切り詰めて価格を下げています。

自社の非正規ルートの製品と戦うために正規ルートの価格を下げるというなんとも不毛な争いです。

 

FTAの効果とは

FTAとは自由貿易協定のこと。

インドとスリランカのFTAは1998年に締結され、2000年に発効しています。

それから一部の商品を除いて段階的に関税を撤廃して今に至ります。

 

例えば中国製の商品を直接インドに輸入すると高額の関税がかかります。

ところが部品や材料を中国からスリランカに輸入して(この時に関税がかかりますが、完成品に比べると税率は低い)スリランカで完成させた商品をインドに輸出すると、インドでは関税がかからないのです。

そうすると非正規に持ち込まれた商品に対しても対抗できる価格設定ができるようになります。

 

そうするともちろん貿易も盛んになるし、大消費地であるインドを主なマーケットにしている企業が貿易ハブでもあるスリランカ国内に工場を持ってくるので工業も盛んになります。

歴史的にいろんな紛争もありますが、地理的にも経済的にも切っても切れないのがスリランカとインドなのです。

 

スリランカで売られている電気製品も・・・

インドの例で書きましたが、実はスリランカの電器屋で売られている商品もハンドキャリーの商品がたくさんあります。

普通に店頭に並んでいるので気付かない方も大勢いますが、「これ安いな!」 と思える商品は実はハンドキャリーされたものかもしれません。

 

※この記事は別のサイトに寄稿したものを再編集して掲載しています。