スリランカの識字率は92.5%といわれ、アジア全体で見ても極めて高い数値となっています。それを支えるのがスリランカの教育制度。基本的には小学校から大学まで無償で教育を受けられるシステムになっています。
小学校入学は5歳
スリランカでは日本よりも1年早く5歳で小学校 (Primary School) に上がります。日本では住民票さえあればほぼ自動的に小学校への入学手続きが進みますが、スリランカでは異なります。
公立でも私立でも、学校の定めた願書提出日までに自主的に申し込み、親子面接や適正試験を受ける必要があるのです。申し込みを忘れると希望の学校には入れません。
10歳が人生の分かれ道
スリランカ国内でいわゆるエリートコースに乗るためには、5歳の段階でコロンボ、ゴール、キャンディなどの都市名門校に入学し、卒業までの12年で人的ネットワークを作ることが大切です。
しかしこれら名門校への入学のためには、政府や学校関係へのコネに加えて、親が同じ学校の出身かということまでも影響すると言われます。
コロンボ市内でも有名な学校の学区内にある住宅は、特に医者や弁護士の間で人気です。コンドミニアムが建設されるとすぐに売り切れてしまうそうです。
地方在住のため上記の名門校に入学できなかった場合には、5年生 (10歳)時のスカラシップ試験で名門校に転校するチャンスがつかめます。その歳で親元を離れて寮生活をすることになりますが、優秀な子はそうやってエリートコースを目指すのです。
5~10歳:Primary School (日本の小1-小5)
◆スカラーシップ(Scholarship)試験◆
11~16歳:Junior Secondary School (日本の小6-高1)
◆オーレベル(Ordinary Level)試験◆
17~18歳: Senior Secondary School (日本の高2-高3)
◆エーレベル(Advanced Level)試験◆
19~22歳:Tertiary Education (日本の大学、専門学校)
高校受験
16歳時に日本の高校受験に相当するオーレベル(Ordinary Level)試験を受けます。パスすると高校に進めますが、ほとんどの場合は同じ系列の学校に進みます。10歳時のスカラーシップ試験が大事だと言われるのはこのため。
この段階でクリケットの有望選手などのスポーツ特待の学生を入学させる場合もあります。彼らは高校卒業と同時にプロチームに入ることが多いようです。
大学受験
スリランカには国立大学が15校しかありません。有名なのは、コロンボ大学、ペラデニヤ大学、ルフナ大学、ケラニヤ大学、スリジャヤワルダナプラ大学、モラトゥワ大学、など。
大学の数が少ないために、入学するために18歳から受けるエーレベル(Advanced Level)試験は難関です。パスした場合は試験の結果により大学や学科が割り振られるので、学校や学科で大体の成績レベルが分かってしまいます。
エーレベル試験は生涯3回まで(もしくは25歳まで)受験が認められますが、それに失敗するとスリランカ国内で大学に進む道が絶たれてしまいます。実際にスリランカ国内の大学に進めるのは受験資格のある学生の10%程度と言われています。
国外への進学と人材流出
国内の大学に入れない場合、金銭的に余裕のある家庭ならオーストラリアなどの海外の大学に進みます。もしくは最初から国外の大学を目指すケースも少なくありません。
国外の大学に進んだ場合は就職時にスリランカに戻ってくるケースは少なく、人材の国外流出の大きな原因となっています。
専門学校の不足
一方高卒レベルでも実際には仕事探しには困らないといわれます。しかし、大学以外に職業訓練的な学校が少なく、例えば調理師や美容師などを目指す場合に専門的に勉強する場所がないために、それらの専門職の技術レベルが上がらないという問題も抱えています。
政府の計画ではこれら専門学校を今後充実させていくようで、まずはその講師となるべき人材を養成するようです。
学費
一般的にスリランカの公立学校では小学校から大学まで無償で教育を受けられます。ところが、名門公立、もしくは半分私立半分公立の学校では、授業料は免除されるものの、設備費や寄付の名目で入学時に10万ルピー以上を支払う必要があります。
また、学校の施設の修理、備品調達、大掃除などは親が参加するのが一般的です。
(写真出典: http://www.educationtimes.lk/)
インターナショナルスクール
スリランカでインターナショナルスクールと呼ばれるものには2種類あります。
①ローカルインターナショナルスクール
国の定めたカリキュラムを英語で授業するもので、特に英語を学びたいローカル向け。教師はスリランカ人が中心。授業料は月数万ルピー程度。
②本来のインターナショナルスクール
イギリスもしくは国際バカロレアの形式採用の授業が英語で行われる。教師は外国人が多く、授業料は①よりも高くなる。国際バカロレアに加盟するのはオーバーシー・スクール・オブ・コロンボとブリティッシュ・スクール・イン・コロンボの2校
日本人学校
日本から数年間の滞在予定でスリランカに来る、また逆にスリランカ人でも将来的に日本に住む予定なら、小学校と中学校は日本人学校も選択できます。
英語もシンハラ語も、スリランカ伝統芸術も学べるし、遠足などで普段は接することのないスリランカ文化を体験できます。なんといっても少ない生徒数に対して充実したスタッフで、マンツーマン的な恵まれた環境で教育を受けられます。
教育熱心。教師への敬意が高い
このように熾烈な受験戦争があるためか、一般的にスリランカの家庭は教育熱心です。学習塾は山ほどあって、大学生や公立校の先生のいいアルバイト先にもなっています。
また教師の立場からすると、学生は勉強に熱心で、教師への敬意も高いため、教えやすい環境となっています。