進化型アーユルヴェーダ 『エクセレンディブ』 の日本人経営者に聞く

「伝統のアーユルヴェーダを、日本人の顧客満足レベルで提供するのが目標です。」

と語るのは、ExSerendib WorKs (エクセレンディブ・ワークス) 、CEOの渡辺泰眞さん。

Watanabe

 

アーユルヴェーダは伝統医療というだけあってか、ドクターと顧客(患者)の間に主従関係ができてしまいがちです。顧客は受け身の立場になってしまい、施設によっては十分な説明がないままにトリートメントだけを受けるというようなケースも多いのです。

正しいトリートメントが受けられさえすればいいという考え方もありますが、西洋医学のトレンドにも照らすと”インフォームドコンセント”というのは大事な要素です。

昔ながらのアーユルヴェーダ施設ではおざなりにされがちなこの要素を大切にして、現代風に進化させたシステムで運営しているのが、コロンボ市中心部にある渡辺さんのアーユルヴェーダ施設 『ExSerendib Ayurveda Cure & Therapy (エクセレンディブ アーユルヴェーダ キュア&セラピー)』なのです。

 

アーユルヴェーダ診断書

Ayurveda Medical Certificate”インフォームドコンセント”を実現する手段のひとつとして、「”AYURVEDA MEDICAL CERTIFICATE” という、いわゆる診断書をすべてのお客様に発行しています。」

顧客のドーシャがどういうバランスで、それが現在どのように変化しており、そのためにどういうトリートメントが有効で、その際にどの種類のオイルが効果的かという内容が事細かく書き記されています。

「前提となる施術前の診察を、問診から脈診まで、専門医師が時間をかけて丁寧に行っています。日本語可能なスタッフも常駐しているので、細やかなやり取りも可能です。」

診断書には、体質(トリドーシャ)の状態に合った食べ物や生活習慣に関しても記載されているので、その場限りではなく家に帰ってからもトリートメントが実践できます。

「旅行者にとっては、スリランカ旅行ならではの記念としても好評をいただいています。」

 

JICAプロジェクトがスリランカとの出会い

アーユルヴェーダに惚れ込んで、自らがトリートメントの修行をしてサロンを始めるというケースは聞いたことがあります。しかし、渡辺さんの場合は異なり、昔からアーユルヴェーダをやろうと心に決めていたわけではないのです。

日本での会社員生活経験後、JICA (国際協力機構) のプロジェクトで野球の指導をするというミッションに採用され3年間スリランカに滞在しました。プロジェクト終了後に進学した大学院の調査対象として2年間スリランカで過ごし、その後物販などのいろいろなビジネスにチャレンジしました。その当時はある程度の収入はあるもののビジネスが大きくフライすることはなかったと言います。

 

”本物のアーユルヴェーダ”をビジネスに

「ずっとこの状態ではいけない!」 ということで、真剣に事業形態を考え始めたのはスリランカ滞在が通算で6年目を迎えたころ。

ふとしたきっかけでアーユルヴェーダのことを調べてみると、特にコロンボ市内には”本物の”アーユルヴェーダ施設がなく、スパに特化した施設や、体験的にトリートメントを受けさせる施設ばかりが目につきました。

「チャンスがあるぞ!」 とひらめいたのがこの時でした。

Exserendib Aryurveda

超短期間での開業準備

そこからが早かった。アーユルヴェーダ施設となる物件を探して賃貸契約し、それに合わせて内装工事。ドクターの資格を持つ二人を引き入れて、さらにはセラピスト候補を採用してトレーニングをおこなう。そして什器を調達して開業に至ったのが、なんと決断してからたったの3か月後の2016年6月なのです。

”スリランカでは何をやるにも遅い”というのが定説のように語られて、最初からあきらめムードが漂うことも多いですが、うまくマネージすれば不可能はない、というのがわかって記者も軽くショックを受けてしまいました。

「6年間もスリランカにいますからね。シンハラ語もわかるし、スリランカ人のものの考え方も理解しています。また6年にもわたる滞在中に培ってきた人脈が大きな助けになりました。」

とはいえ、プロジェクトの遂行能力はかなりのものだと思います。

 

ExSerendib
『エクセレンディブ アーユルヴェーダ』のエントランス
正面の黒板にはその日の予約者の名前が英語とシンハラ語で表記される。

 

今後の展望

「アーユルヴェーダをやろうと思っている。」と言うと建物のオーナーから賃貸を拒否されることも多かったと言います。アーユルヴェーダと偽った風俗店が多くネガティブなイメージがあるんだそうです。

「スリランカの大切な文化でもあるアーユルヴェーダにとっては悲しい現実です。お客様に満足いただけるサービスを提供することで、アーユルヴェーダの良いイメージを作りあげていくのも、『ExSerendib Ayurveda (エクセレンディブ アーユルヴェーダ)』の役割のひとつと認識しています。」

Exserendib Aryurveda

元来はアーユルヴェーダの専門家というわけでもないのに、短期間で準備を進めて開業を実現する。しかも上手に専門家を引き入れることでトップレベルのクオリティーまでをも実現してしまうというのは、今後、スリランカに限らずいろいろな場所で起業を志す人たちの道標になるのではないかと思います。

 

ExSerendib Ayurveda Cure & Therapy  (ウェブサイト
Address: 32/8A, Flower Road, Colombo 07
シナモンレッドホテルからも徒歩圏内です。