コロンボサウスポートの南側を大規模に埋め立てて新しい街を造る
コロンボポートシティープロジェクト
が大きく動き出しています。
ちょうどキングスバリーホテルの前あたりです。
海岸沿いにあったはずのキングスバリーホテルはずいぶんと海から離れてしまいます。
（せっかくのインフィニティープールが・・・。）
東京ドームおよそ50個分（2.33平方キロ）もの広大なエリアを埋め立てて、ショッピング、ウォータースポーツ、ミニゴルフ、ホテル、コンドミニアム、レクリエーション、マリーナなどの各施設、果てはF1のレースコースまでもが計画されています。
しかし、実はこのプロジェクト、実現までにかなりの紆余曲折があります。
（出典：http://colomboportcity.lk/）
プロジェクトの成り立ち
ラージャパクサ前大統領がコロンボ港建設のための埋め立て工事を視察した際に刺激を受けたというのが、埋め立てによる新たな街づくりの計画のきっかけだと言われます。
その後の立案、検討を経て、2011年に開発へのゴーサインが出ます。
ところが様々な理由によりプロジェクトはすぐにストップしてしまいます。
そしてあらためて2014年の9月に、中国からの直接国外投資によりチャイナ・ハーバーエンジニアリング・コーポレーションの施工で工事が再開されました。
（出典：http://colomboportcity.lk/）
スリランカと中国との関係
実はスリランカは内戦終結の時期に、それまで続いていたEUやアメリカとの外交・貿易関係を悪くしてしまいます。
内戦中に民間人の殺害や避難民への人権侵害があったとして国際連合からの指摘を受けました。
それを認めないスリランカ政府に対して西側諸国は抗議のための外交制裁をおこなったのです。
その時に逆に手を差し伸べたのが中国で、以来、港湾・空港の整備、高速道路の建設、国際会議場の建設、ロータスタワーの建設など多くの中国資本のプロジェクトが生まれており、スリランカは中国との関係性を深めていきます。
計画反対派の視点
ところが埋め立てによる環境破壊や、インド洋に突き出した防衛上重要な位置にある土地を実質的に中国が保有してしまうことに批判が注がれます。
（もともとは中国とスリランカが共同で所有する計画だったが、インドのクレームにより99年リースに変更）
またプロジェクト推進に関連した手続きの不透明性や不正疑惑を問題として推進反対派の抵抗を受けてしまいます。
反対派は、当時野党側のシリセナ氏が大統領選に勝ったら計画自体を完全に中止するというコメントさえも出していました。
実際に2015年には勝利したシリセナ大統領のもとでポートシティープロジェクトを含む中国資本のプロジェクトが軒並み中断となりました。
しかし結果的にはポートシティープロジェクトは計画中止とはならず、正式な環境アセスメントと、クリーンな手続きによりデベロッパーとの再合意を結ぶというのを再開の条件としています。
いよいよ再々スタート
そしてそれからほぼ1年後の2016年5月。
ようやく再合意がとれて、計画が再び動き出しています。
（出典：http://colomboportcity.lk/）
14億ドル (1400億円。※2016年9月時点) もの予算によって成り立つこの大プロジェクト。
これもまたコロンボを様変わりさせる一つの大きな要因になりそうです。
（出典：http://colomboportcity.lk/）
ポートシティーが完成した暁には、貿易及び投資に関する特区となり、世界中から投資家が集まりビジネスが生まれる地域になることが期待されています。
中国とEU、アメリカ、そして隣国インドの綱引きが垣間見える複雑な事情を抱えたプロジェクトであることは事実です。
それもスリランカの地政学的な魅力、つまり西欧、アフリカ、中東、東南アジア、日本に囲まれたロケーションで流通のハブとしての価値が評価されていることの表れともいえると思います。
今後のプロジェクトの進行状況に注目です。
2019年の完成が予定されています。
※本記事は別サイトに寄稿したものを編集して再投稿したものです。